「スポーツビジネスジャパン コンファレンス2026」をコングレスクエア日本橋で開催しました~ 2日目
2026年1月22日~23日、株式会社コングレ直営のホール&カンファレンス「コングレスクエア日本橋」(日本橋駅直結、東京駅徒歩5分)で「スポーツビジネスジャパン コンファレンス2026」(主催:日本スポーツ産業学会、株式会社コングレ)を開催しました。
スポーツビジネスジャパンは「スポーツビジネス促進」と「スポーツを通じた地域活性化」のためのプラットフォームとして、2016年からスタートしたスポーツビジネスに特化した専門展示会&コンファレンスです。
今回のテーマは「スポーツビジネスのレガシーとミライ」。スポーツビジネスの第一線で活動するスペシャリスト総勢23名に登壇いただき、先人が築いてきた知見をいかに次世代へとつなぎ、新たなビジネス価値を創出していくのかについて、活発な議論が交わされました。
レポート第2回は、「スタジアム・アリーナ」と「プロスポーツリーグ」の最前線に焦点を当てた2日目のセッション内容をご紹介します。

スポーツビジネスとは?
スポーツビジネスとは、競技や大会の運営にとどまらず、スポーツを軸に、人・まち・企業・テクノロジーなど多様な領域をつなぎ、新たな価値を創出していく産業領域です。プロスポーツリーグやクラブ運営、イベント・大会の企画運営、スタジアム・アリーナ開発、放映・配信、スポンサーシップ、地域活性化、教育・人材育成など、その領域は年々広がりを見せています。
近年では、スポーツが持つ「集客力」「共感力」「継続性」といった特性を活かし、地域課題の解決や都市のブランディング、観光振興、さらにはサステナビリティやウェルビーイングといった社会的テーマとも深く結びつくようになりました。スポーツビジネスは、経済的価値の創出に加え、社会的価値を生み出す存在として、国内外で注目を集めています。
スポーツビジネスジャパン コンファレンス 2日目
2日目は、早稲田大学スポーツ科学学術院 教授/日本スポーツ産業学会 副理事長の中村 好男氏による開会挨拶でスタートしました。

SBJセッション1 スタジアム・アリーナのミライ
吉倉 秀和 氏 びわこ成蹊スポーツ大学 准教授 / 日本スポーツ産業学会 運営委員
早川 琢雄 氏 日本政策投資銀行 産業調査部 調査役
古賀 亮 氏 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 スポーツ・スタジアムビジネス共創室 室長
井上 滋道 氏 株式会社梓設計 スタジアム・アリーナビジネスユニット マーケティングマネージャー




SBJセッション1では、金融、設計、事業開発のスペシャリストが登壇し、日本のスタジアム・アリーナが直面する課題と、それを乗り越えるための戦略が共有されました。
モデレーター びわこ成蹊スポーツ大学(吉倉氏)
吉倉氏の司会進行にて、スタジアム・アリーナ改革について、多角的な視点から見る持続可能なモデルが議論されました。
公的支援から民活・事業化へのシフト 日本政策投資銀行(早川 氏)
国内のスタジアム・アリーナ整備において、公的資金に頼るだけでなく、民間のノウハウと資金を活用した「事業化」の重要性が強調されました。
エビデンスに基づく整備:従来の「作ること」を目的とした整備から、スポーツの価値を数値化し、地域経済への波及効果などのエビデンスに基づいた整備へと転換する必要があります。
民活(PFI/PPP)の深化: 運営権を民間に売却するコンセッション方式など、持続可能な運営体制の構築が急務です。
金融を通じた地域価値の向上 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(古賀 氏)
MUFGが掲げるパーパス「世界が進むチカラになる。」に基づき、スタジアムを地域コミュニティの「ハブ」や「金融の心臓」として機能させるビジョンが語られました。
国立競技場を起点とした地域貢献: 国立競技場(MUFGスタジアム)を単なるスポーツ施設としてではなく、人々が交差(クロス)し、地域をより豊かにするための「接点」と捉えています。金融の知見を活かし、周辺地域を含めた街全体の価値を底上げするハブ機能を追求しています。
新しいテクノロジーの実証実験: 5万人規模の観客が集まるスタジアムを、最先端技術の「社会実装の場」として活用。デジタルサイネージやDXを活用した運営効率化など、パートナー企業とのBtoBネットワークを通じて、新たなビジネスモデルを検証・創出する場としての役割を果たして行きます。
コスト高騰への対応と資産価値: 10年前の2016年(1ドル100円程度)と比べて為替変動や資材高騰により建設コストは約1.5倍に膨らんでいます。これに対し、ネーミングライツなどの既存手法を超えた「街全体のブランド力向上」による収益化が必要であり、チケット価格を上昇させる場合は、その分を補って余りある「感動」や「交流」という体験価値をいかに提供できるかが問われています。
世界基準ベニューデザインの設計思想 株式会社梓設計(井上 氏)
海外の事例を参考に世界的なトレンドを反映した、収益性と体験価値を最大化する設計思想が提示されました。
エンタメ・ディストリクトの形成: 米国の事例(オラクル・パーク等)のように、スタジアムを単体の施設ではなく、周辺の商業施設やホテルと連携した「エンターテインメント・ディストリクト(地区)」の核として位置づける設計思想が必要です。
フレキシブルな運営: スポーツだけでなく、コンサートや各種イベントに対応できる可変性の高い設計が、稼働率向上の鍵となります。
10年先を見据えた投資: 今の小学生が選手や観客となる10年後の未来を見据え、デジタル技術やホスピタリティ機能を継続的にアップデートできる「スポーツベニュー」としての構造が求められます。
セッション4 音楽特化型『Kアリーナ横浜』から探る──未来のスポーツアリーナ設計
モデレーター:
富士本 優 氏 ヤマハサウンドシステム株式会社 首都圏営業所営業課 スポーツ施設市場開発担当リーダー
施設オーナー:
鳥山 彬弘 氏 株式会社Kアリーナマネジメント エリアマネジメント部 部長
プロジェクトマネジメント会社:
大野 良明 氏 ソニーマーケティング株式会社 B2Bビジネス本部 統合戦略部門B2ビジネス3部ロケーションバリュー企画室 室長
音響会社:
長谷 浩史 氏 ヤマハサウンドシステム株式会社 計画設計課 スポーツ施設市場開発担当




米音楽誌『Pollstar』の調査で、2025年の年間観客動員数世界1位(約204万人)を獲得した「Kアリーナ横浜」。2023年の開業前からプロジェクトを推進してきた3社が登壇し、それぞれの専門領域から「高稼働・高品質」を実現する設計・運営思想を明かしました。
施設オーナーの取り組み 株式会社Kアリーナマネジメント(鳥山 氏)
ケン・コーポレーションのグループ会社として、施設全体の運営・管理を担う視点から、既存のアリーナとは異なる独自の戦略を語りました。
「音楽」への特化と圧倒的な鑑賞体験: 当初からスポーツとの多目的利用ではなく「音楽専用」に振り切ることで、2万席すべてがステージ正面を向く扇状の座席配置を実現しました。
ホスピタリティの収益化: アリーナ最上階のバーラウンジやVIPエリアを拡充し、飲食を自社運営(直営)とすることで、リピーターの満足度向上と高い収益性を両立しています。
地域と連動したエリアマネジメント: アリーナ単体の成功にとどまらず、隣接するホテルや周辺施設と連携し、横浜・みなとみらいエリア全体の賑わいを創出する「街の視点」を重視しています。
プロジェクトマネジメントの取り組み ソニーマーケティング株式会社(大野 氏)
プロジェクト全体のとりまとめとして、システム実装からリスク管理まで、新しいビジネススキームの構築を主導しました。
「1DAYコンサート」を支えるシステム: 通常の大規模公演では設営日を要しますが、特殊設備をあらかじめ実装することで「身一つ」での公演を可能にし、稼働率を最大化しています。
リスク・リターン設計の刷新: 施設側が100%のリスクを負う「貸し館」モデルから脱却し、主催者と共に利益を最大化できる、大型ライブハウスのような柔軟なパートナーシップモデルを提唱しています。
デジタル技術による運営効率化: 2万人規模の動線を管理するDXソリューションを導入し、入場から物販、飲食までストレスのない顧客体験と、効率的な運営を両立させています。
音響設計・施工の取り組み ヤマハサウンドシステム株式会社(富士本 氏・長谷 氏)
「日本中をいい音で響かせたい。」という想いのもと、ハード・ソフト両面から音楽専用アリーナに相応しい音響ソリューションを提供しました。
世界基準の常設音響インフラ: ヤマハおよびNEXOブランドのハイエンドスピーカーを常設。主催者が機材を持ち込むコストと設営時間を劇的に削減し、アーティストの表現力を支える最上の舞台を整えました。
施設のビジョンに沿った音響シミュレーション: 設計段階から最新技術でシミュレーションを行い、2万席どこにいても均一で迫力あるサウンドを届けるための緻密な配置を導き出しました。
メンテナンス・運用まで一気通貫のサポート: 1つ1つのスピーカーの品質を維持するため、定期点検や運用サポートを継続。ヤマハの技術があるからこそ創り出せる「心震える瞬間」を追求しています。
セッション5 GLION ARENA KOBEとTOTTEIの街づくり~アリーナを軸としたスマートシティモデルの挑戦~
渋谷 樹 氏 株式会社One Bright KOBE 取締役 ※オンライン登壇
石井 佑児 氏 株式会社One Bright KOBE ベニューマネジメントDivision/イベント統括Division・Division Manager
岩岡 丈夫 氏 株式会社大林組 設計本部建築設計部建築設計課 課長


神戸のウォーターフロント再開発の核となる「GLION ARENA KOBE」プロジェクトについて、運営と設計・施工それぞれの視点から、民設民営の「スマートシティ型アリーナ」の全貌が語られました。
運営の取り組み 株式会社One Bright KOBE(石井 氏)
Smart Cityプロジェクト「TOTTEI」の運営主体として、アリーナを起点とした地域活性化の仕組みづくりを担っています。
「Commons Tech KOBE (CTK)」の展開: アリーナ周辺にビーコンを設置し、専用アプリを通じて来場者の人流データをリアルタイムで収集し活用しています。
回遊性の向上: 収集したデータを活用し、近隣の飲食店や商業施設で使えるクーポンやマイルを発行することで、アリーナ内にとどまらない「街全体の経済活性化」を図る役割を担っています。
B.LEAGUEとの連携: 2025年4月の開業に向け、B.LEAGUE「神戸ストークス」のホームアリーナとして、年間30試合以上の興行を軸にした安定的な集客とコミュニティ形成を主導してきました。
設計・施工の取り組み 株式会社大林組(岩岡 氏)
「270度を海に囲まれた」という世界的にも稀有な立地条件を活かし、技術力でビジョンを形にする役割を担っています。
ランドマークとしての設計: 港町・神戸の風景と調和しつつ、国内外からの来訪者を魅了する1万人規模の次世代アリーナとして設計しています。
ラグジュアリーな空間体験: 「海を感じられる風景」を最大化し、水と緑が豊かな上質な滞在空間を創出。単なる競技施設ではなく、VIPルームやラウンジなど、多様なニーズに応える高付加価値なベニューを実現しています。
テクノロジーの実装: スマートシティ構想をハード面から支えるため、人流計測やデジタルサイネージ、環境負荷低減に配慮した最先端の建築技術を投入しています。
SBJセッション2 プロスポーツリーグのレガシーとミライ
岡田 明 氏 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
菅原 瑠美 氏 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ GM(担当役員)
實吉 冬貴 氏 公益社団法人SVリーグ 事務総長 / 公益財団法人日本バレーボール協会 理事



SBJセッション2では、プロリーグのレガシーをどう次世代へ繋ぎ、新たなビジネスモデルを構築するかについて議論されました。
モデレーター EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(岡田 氏)
モデレーターとして、スポーツが持つ社会的・経済的価値の可視化と、現代の消費行動に合わせたエコシステム構築の必要性を提示しました。
価値の可視化と最大化: スポーツビジネスにおけるパートナーシップは、単なる広告露出を超え、地域社会へのインパクトを共に創出するフェーズへ進化すべきだと指摘しました。
ライフスタイルへの適応: スマートフォンの普及により可処分時間の奪い合い(1日平均利用389分、スワイプ文化等)が激化する中で、若者の視聴習慣に合わせたコンテンツの届け方や、スタジアムでしか味わえないリアルな体験価値の再定義という課題を投げかけました。
Bリーグの取り組み(菅原 氏)
BリーグのGMとして「B.革新」の進捗と、バスケットボールが地域にもたらすインパクトについて語りました。
「B.革新」による構造改革: 2026年7月シーズンから始まる新ライセンス制度(Bプレミア等)では、昇降格制度の撤廃を伴う大胆な改革を断行。売上高12億円、入場者数平均4,000人、アリーナ要件(5,000席以上等)の「3点」を軸に、勝敗に左右されない経営基盤の確立を目指します。
地域創生とアリーナの活用: クラブが地域社会の「公器」となり、アリーナを軸とした地方創生を推進 。「秋田ノーザンハピネッツ」による「こども食堂」や、「茨城ロボッツ」による交流拠点「M-SPO(まちなか・スポーツ・にぎわい広場)」など、社会課題解決に向けた活動をしています。
次世代へのファン拡大とグローバル展開: 90年代の『スラムダンク』ブームで育った世代から、近年の日本代表の活躍でファンになった若い世代まで層が広がる中、バスケを「ライフスタイルの一部」として再定義。アジア市場への展開も視野に入れ、世界に通用するエンターテインメントとしての価値向上に向けて進んでいきます。
SVリーグの取り組み(實吉 氏)
金融界での経験を活かし、バレーボールのプロ化とビジネスとしての確立を目指す取り組みについて話しました。
SV.LEAGUEへの進化: 2024年に発足したSV.LEAGUEを、世界最高峰のプロリーグへと押し上げるべく、アジア圏のトップ選手獲得や配信ビジネスの強化を推進しています。
女子スポーツは「ラストフロンティア」: 米国での女子スポーツの盛り上がりを例に、日本でも女子の競技人口およびファン層の厚いバレーボールは大きな成長余力を持つ市場(ラストフロンティア)であると言えます。
企業スポーツの良さを活かしたプロ化: 従来の企業チーム主体の「アマチュアリズム」が築いてきた歴史や安定感を基盤として活かしながら、クラブが自ら稼ぎ地域に貢献する「プロフィットセンター」へと進化させています。バレーボールの競技特性を活かしたホスピタリティの向上により、持続可能なプロスポーツの姿を追求していきます。
サマライズセッション(2日目)
吉倉 秀和 氏 びわこ成蹊スポーツ大学 准教授 / 日本スポーツ産業学会 運営委員

スポーツビジネスジャパン コンファレンス2026のDay2を締めくくるサマライズセッションでは、吉倉氏が登壇。2日間の多角的な議論を振り返り、スポーツビジネスが向かうべき次なるステージを独自の視点で総括しました。
「価値の土台」から「価値の再設計」へ: 従来の「競技×観戦×消費」というスポーツ産業(industry of sports)の枠組みを超え、都市、文化、エンターテインメントを統合する基盤産業(industry through sports)へと拡張していく可能性を強調しました。
社会を豊かにする接点の創出: 2日間の各セッションを「社会を豊かにする接点」「選ばれるアリーナへの挑戦」「スマートシティモデルの構築」「プロビジネスの発展」と総括。他産業との協業やコミュニティ創造が、スポーツビジネスの新たな領域を切り拓く実感を共有しました。
戦略的独自性の追求: 競争戦略の原則(ポジショニング、一貫性、独自性)に触れ、理論と情熱が合わさることで、スポーツ産業が新しい社会を創造し、明るい夢や未来を描けるのかという問いを投げかけ、会を締めくくりました。
登壇者と参加者をつなぐ交流の場
ラウンジスペースにはドリンクや出展スペースを設け、セッションごとに参加者と登壇者が交流できる15分間のブレイクタイムで交流促進を行いました。新たな取り組みとして、予約抽選制のラウンジセッションを実施しました。
また、すべてのセッション終了後、参加者同士のネットワーキングの時間を設け、スポーツビジネス関係者同士の有意義な交流の場となりました。


1日目のレポートは→こちら
