「第89回日本循環器学会学術集会」が開催されました
「地震・津波災害」をサブテーマに会場で災害対応シミュレーションを実施
2025年3月28日~30日、「第89回日本循環器学会学術集会」がパシフィコ横浜で開催され、株式会社コングレは企画運営を担当しました。
歴史と伝統のある本学術集会では、メインテーマ「私たちは循環器が好き - We Love Cardiovascular (CV) Science -」の下、循環器学に関わる最新情報を集め、参加者がお互いに交流を深めるほか、「地震・津波災害」をサブテーマとして会期中に災害対応シミュレーションを行うなどユニークな企画が実施されました。
オンデマンド配信終了後の参加者数は過去最高の21,371名(関係者含む)を記録し、大盛況のうちに終了しました。


室原 豊明会長(名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授)
メインテーマ「私たちは循環器が好き - We Love Cardiovascular (CV) Science -」
一般社団法人日本循環器学会は、日本の循環器病学の研究、診療、人材育成などの多くの領域において数多くの輝かしい成果を上げ、37,000人を超える会員数を擁する学会です。
本学術集会のメインテーマは「私たちは循環器が好き - We Love Cardiovascular (CV) Science -」です。
テーマについて、室原 豊明会長(名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授)は「昨今の若手医師の『内科離れ』、ひいては『循環器離れ』を危惧し、再度循環器病学を目指す医療者の心意気に立ち返って明快で心に残るメッセージということを考え、学術集会のメインテーマを「私たちは循環器が好き - We Love Cardiovascular (CV) Science -」としました。基礎・臨床を問わず、循環器領域の最先端の魅力を余すことなく、若手医師や研究者、さまざまなメディカルスタッフの皆さまに共有したい」と述べられました。
本学術集会の開会式は、医師でピアニストの沢田 蒼梧先生のピアノ演奏で幕を開けました。
沢田先生は、2023年3月名古屋大学医学部医学科を卒業、今年4月からは小児科医として勤務されています。開会式ではショパンの楽曲を演奏され、会場全体を魅了しました。


特別講演「大規模地震後にも医療を持続するために」
学術集会期間中に巨大地震や大津波警報が発出される可能性を想定し、本学術集会はサブテーマとして「災害」、特に「地震・津波災害」を掲げています。
建築耐震工学、地震工学、地域防災が専門の福和 伸夫先生(名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長)の特別講演「大規模地震後にも医療を持続するために」では、災害の多い日本の歴史を振り返りつつ、事前防災の重要性や災害時に医療を継続させるために必要な点検事項などが紹介されました。

会場全体に中継した災害対応シミュレーション
特別講演後、全会場を中継で結んで、南海トラフ地震と津波の発生を想定した災害対応シミュレーションが行われました。
最初に緊急地震速報が響き渡り、巨大津波が次々と全国各地の沿岸に到達する様子が伝えられます。
福和先生の解説によってシミュレーションが進んでいき、会場であるパシフィコ横浜では、津波警報では2階以上に避難することが定められていること、津波警報がなく建物に被害がない場合は避難指示があるまでその場所に留まること、建物に被害がある場合または火災が発生した場合は避難場所である臨港パークに避難することなどが説明され、刻一刻と変わる状況のシミュレーションによって、災害発生時に起こり得ることを学ぶ貴重な機会となりました。

能登半島復興支援展示会スタンプラリーと「出張輪島朝市」
今回はサブテーマに合わせ、展示会では能登半島の復興支援の企画を行いました。
医療機器メーカーなどの展示でスタンプラリーを実施。各企業展示ブースの訪問でスタンプを集めた方に呈茶セットまたは能登半島復興支援品をご提供しました。


また、「出張輪島朝市」の石川県や能登にゆかりのある商品を販売するコーナーは、多くの参加者で賑わいました。


SDGsの取り組み
本学術集会では、室原会長の想いを受け、SDGsの企画も取り入れています。
ランチョンセミナーの弁当はフードロスを回避するため、セミナーへの参加を事前登録制とし、弁当手配数の適正化を図りました。また、参加証を入れるビニール製のネームカードケースは使用せず、そのままネームホルダーに装着可能な用紙を導入し参加証を発券しました。

会期前に名古屋市内で開催した市民公開講座
学術集会の1週間前に、名古屋市内において「心臓病の予防に関する市民公開講座」と「第23回心肺蘇生法市民公開講座」を合同で開催。講演や心肺蘇生法の講習、そして名古屋市出身の俳優 舘ひろし氏をお招きしたトークショーを行い、多くの市民の方々に正しい医療・健康情報をお伝えする機会となりました。
また、会場にあいち小児がんの会が行うレモネードスタンドを設置。これは、小児がん啓発を目的としたもので、レモネードを購入することで小児がんのお子さんやご家族の支援に繋がります。参加者が購入する様子が多く見られました。


企画運営責任者のコメント
私にとって、室原会長の"日循"を担当させていただくことは悲願でした。キックオフに際し、室原先生より「若手を鼓舞するような学会にしたい」とのお話を伺いました。開催4か月前のPRビデオの収録では、稲盛和夫氏の「自分が好きな仕事に就けるのは非常にまれなこと」という言葉を通じて、「自分が好きで選んだ循環器病学を若い世代に伝えていきたい」との想いをもって「私たちは循環器が好き」というストレートなテーマとされたことを再認識しました。
また、室原先生は専門領域の継承のみならず、女性医師の積極的な登用、有事を想定した避難シミュレーション、フードロスへの取り組みなど、企画段階からサステナビリティの推進を念頭に置かれ、コンセプトメイクをされました。そのご意向に沿い「私たちに何ができるか」を考えながら、避難シミュレーションの構成案、被災地支援を考慮した参加者サービス・記念品の選定、プラスチック使用の削減、病を抱える子どもたちへの支援など、さまざまな企画提案をさせていただきました。
主催・学会事務局の皆さまのもと、本学術集会に参画させていただき、ステークホルダーの方々のご協力もあってサステナブルMICEとして有意義な成果を得ることができましたことに、心より感謝申し上げます。
第89回日本循環器学会学術集会 室原豊明会長のコメント
今回の学術集会のメインテーマ「私たちは循環器が好き - We Love Cardiovascular (CV) Science -」に合わせ、学会ロゴは自分自身で創案を考え、コングレの皆様に完成していただきました。
特別講演では「災害」、特に「地震・津波災害」にもサブテーマとして焦点を当て、地震工学・防災の権威であられ、メディアにもたびたび出演されています、福和伸夫先生をお招きし、ご講演とシミュレーションによる避難訓練を行い、その模様を全会場のスクリーンで同時上映しました。私の記憶では、これまで循環器学会を含む大規模学会の期間中に避難訓練を行った学術集会はなかったと思います。
今回主催の会長校(担当大学)が名古屋大学でありながら横浜市での開催となり、大変な苦労もありましたが、コングレの皆さまのお力により、会の運営を助けていただき、無事に開催できました。かねてからSDGsに配慮した学会運営をと考えておりまして、ランチョンセミナー弁当の無駄(フードロス)の回避、ビニール製のネームカードケースを用いない参加証発券などのご配慮とともに、展示出展企業やポスターセッションまで人が回るような時間(学会日程)と空間の配置、さらには直前までの様々な運営上の細かな要請にもご対応いただき、素晴らしい学会が開催できたと自負しております。20,000名以上の学会参加登録者と、14,000名以上の現地参加者をお迎えできたことは、至福の極みであります。
また、学術集会の1週間前に開催した市民公開講座も大盛況となり、ご協力いただきましたコングレの皆さまに御礼を申し上げます。
最後に、今後の皆さまの益々のご発展を祈念いたします。今回は、誠にありがとうございました。
