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MICEをキーワードに地方創生を目指す―出島メッセ長崎の取り組み

インタビュー

MICEをキーワードに地方創生を目指す―出島メッセ長崎の取り組み

2021年11月、JR長崎駅前に長崎市としては初めての本格的なコンベンション施設「出島メッセ長崎」が開業します。MICE(※)の開催を通じて、“交流の産業化による長崎創生”をキーワードに長崎市の魅力・ブランド力向上を目指します。コングレは、出島メッセ長崎の指定管理者「株式会社ながさきMICE」の構成員として、MICE施設の運営・維持管理および誘致業務を担当します。今回は、出島メッセ長崎での取り組みや、今後の展望などを、九州支社コンベンション事業本部の担当者に聞きました。

九州支社コンベンション事業本部:鈴木規史 (SUZUKI Norifumi)

※MICEとは、Meeting(会議・研修)、Incentive travel(報奨旅行)、Convention(国際会議・学会)、ExhibitionまたはEvent(展示会・イベント)の総称

インタビュアー:いよいよ本年11月に出島メッセ長崎がオープンしますね。事業の経緯や、そこでのコングレの役割などご紹介いただけますか。

鈴木:出島メッセ長崎の新設事業は、「長崎市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げられた特定戦略「『交流の産業化』による長崎創生」に基づき推進されてきました。行政と民間が力を結集させ、「交流の産業化」をキーワードに、これからの時代にふさわしい新しい交流の形をつくる試みです。コングレは、この事業のSPC(特別目的会社)である「株式会社ながさきMICE」の一員として、施設の運営・維持管理と誘致業務を担っています。現在は、本年11月の開業に向けて、鋭意準備を進めているところです。
出島メッセ長崎は、PFI事業(※)で整備されるMICE施設としては、全国でも有数の規模となります。2022年の九州新幹線西九州ルートの開業で、交通アクセスが大幅に向上するJR長崎駅では、周辺の再整備事業なども同時に進行しており、長崎の「まち」が大きく生まれ変わろうとしています。出島メッセ長崎は、新しい長崎の中核を担う交流施設として、大きな関心と期待をお寄せいただいているな、と日々感じています!

※PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法

インタビュアー:生まれ変わる「まち」の交流を支える施設として、出島メッセ長崎にかけられる期待は大きいですね。施設の特徴を教えてください。

鈴木:出島メッセ長崎の特徴は、なんといってもJR長崎駅に直結していることです。屋根付きペデストリアンデッキで直結するので、日本一駅に隣接した大型MICE施設となるのではないでしょうか。また、ヒルトンホテルが同時に開業することもMICEの誘致・開催に大きなメリットとなります。パーティーやケータリングなどでの協働で、開催イベントの幅も広がると思います。加えて、駅の反対側には浦上川、長崎港があり、絶好の散策コースになっています。会議やイベントの合間のこうした楽しみも、自然豊かな長崎のロケーションならではです。

鈴木:会場には、2分割可能な約3,800㎡のイベント・展示ホール、4分割可能な約2,700㎡のコンベンションホール、20~600㎡の大小24の会議室を配備しました。大型MICEから小規模会議まであらゆるニーズに対応できる設計です。コンベンションホールは、天井高が約10メートルあり、最新の映像音響機器を設置予定です。イベント・展示ホールは、天井高約12メートル、床荷重5t/平方メートルを確保した長崎初の本格的な展示ホールとなります。

鈴木:施設の設計にあたっては、コンベンション事業本部で大型学会や国際会議の誘致・運営を担当してきたメンバーと、施設・人材サービス事業本部で施設の立ち上げ・運営を手がけてきたメンバーが計画段階から携り、借りる側と貸す側の両方の視点を取り入れながら、会場配置、配備する機器の選定から看板・サインなどを吟味しました。設計者・施工者様とも何度も協議をさせていただきながら、ご関係の皆様の多大なるご協力とご理解を賜り、おかげさまで、日本でもトップクラスのユーザーフレンドリーなMICE施設になったと自負しています。

インタビュアー:計画・設計段階では、新型コロナウィルスの感染拡大など、大変なことも多かったのではないでしょうか?

鈴木:そうですね。ただ、ちょうど感染拡大期には建設中であったため、感染予防対策や、ニューノーマル、ネクストノーマルのMICE開催を想定した様々な施策を追加で実現でき、施設の「強み」を増やすことができました。例えば、感染防止策を踏まえた空調換気設備や、抗菌・抗ウイルス対策などです。ホールは平土間なので、ソーシャルディスタンスを保った配席や飛沫感染を防ぐパネルの設置などにも柔軟に対応できます。また、10Gbpsの大容量光ケーブルを引き込んだインターネット環境も追加整備しました。これからさらにニーズの高まるオンライン、バーチャル会議やeスポーツイベント等にも十分対応可能できるスペックです!こういった施設・設備面の特長も誘致活動に繋げられればと思っています。

インタビュアー:大容量の通信環境や、映像機器などの最新の設備は、MICE誘致の大きな強みですね。

鈴木:確かに、設備的にも非常に魅力的な施設だと思います。ただ、MICE施設は魔法の箱ではない、とよく言われます。ここに人が集って交流していただき、新たな出会いやビジネス、イノベーションが起きるきっかけを作ることが大切で、それが出島メッセ長崎の役割だと思っています。そのためには、地元の皆様と連携させていただきながら、長崎が本来持っている、観光都市としての魅力も併せて訴求していくことが重要だと考えています。
大規模なMICEの誘致には、自治体、地元のコンベンションビューロー、会議場、経済界、PCO(Professional Congress Organizer:コンベンションの企画・運営専門企業)が連携し協力しながら誘致活動を展開します。長崎では、コングレが会場およびPCOの役割を担うことで、スムーズかつ強力な誘致体制になっていると思います。また、地元でも、MICEに関する様々なステークホルダーがそれぞれの強みと特徴を生かしながら、MICE誘致・開催に向けて取り組んでいます。
例えば、長崎市が取り組む、まち全体でMICEを受け入れる「まちMICEプロジェクト」では、ユニークベニュー(※)の開発や、地域資源を生かした体験プログラムの拡充、おもてなし機運の醸成に取り組んでいます。地元大学と連携し、学生の活躍の場を創出する取り組みも始まりました。「長崎MICEスクール(主催:株式会社ふくおかフィナンシャルグループ)」というMICE人材育成講座も開催されています。出島メッセ長崎の開業を契機として、MICEをキーワードにビジネスを興し、雇用を生み出し、長崎の経済を活性化させる。そんな意気込みが感じられます。この産学官民一体となったMICE誘致・開催の取り組みこそが、一番の強みになってくるのではないかと思っています。

※ユニークベニュー:会議やレセプション、コンサート、イベントなどを開催するときに特別感、もしくは地域の特性などを演出できる会場。博物館・美術館、歴史的建造物、神社仏閣、城郭、屋外空間(庭園・公園、商店街、公道等)など

インタビュアー:MICEの持つ様々な効果を地域の皆様により身近に実感いただけるような、そんな取り組みが求められていますね。11月の開業に向けて、出島メッセ長崎の目指す姿や目標を聞かせてください。

鈴木:「出島メッセ長崎があってよかった」と地域の皆様から愛されるような施設を目指したいと思っています。昨年11月に開催した開業1年前イベントで、「ぬりえコンテスト」を開いたのですが、2日間で約150名もの子どもたちに参加いただきました。こんなに多くの皆様に感心をもっていただいているんだな、とうれしく感じた半面、背筋が伸びる気がしました。これから開業を迎えるこの施設が、地域の「顔」として皆様に認めていただけるように育てていくのは重要な任務だなと。

鈴木:私は、担当する会議やイベントに関わる全ての皆様に、この案件に携わってよかった、と思っていただけるような「場」を作りたいと思いながら、東京本社でコンベンション事業に取り組んできました。2020年2月に九州支社に着任してからは、東京での経験を活かし、営業・誘致のリーダーとして案件の誘致に取り組んでいます。この施設での交流が、新たな文化やイノベーションを生み、それが地域の皆様に還元されていく。そんな好循環を早く実現できるよう、地域の皆様とともに進んでいければと思っています。
皆様のお越しを、長崎でお待ちしています!