2019年11月、渋谷スクランブルスクエアの展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」がオープンした。同じころ、東京都町田市の「南町田グランベリーパーク」もまちびらきを迎え、その中核となるパークライフ・サイト内に「まちライブラリー」や「南町田子どもクラブつみき」などのコミュニティースペースがオープン。12月には「スヌーピーミュージアム」がリニューアルオープンしている。いずれもそれぞれのまちの交流の中心となる施設だ。今回は、各施設の担当者から話を聞いた。
施設・人材サービス事業本部
髙久 牧奈(Mona Takaku)・吉田 直史(Naofumi Yoshida)・髙木彩加(Ayaka Takagi)
モデレーター:それぞれの施設における業務内容や施設の特徴などを教えてください。
吉田:2019年11月1日に「渋谷スクランブルスクエア」がオープンしました。コングレは、その中の展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」の運営管理業務を受託しています。5年ほど前からコンサルティングを担当しており、運営準備期間を経て開業しました。私自身は、開業の1年ほど前から携わっています。渋谷は「まち」の特徴として非常に感度の高い方が多いので、圧倒的な“解放感”が味わえる屋上展望空間はもちろんなのですが、ちょっと「尖った」空間デザインや非日常的な環境演出がSNSなどでも話題になり、おかげ様で、開業3か月で予想をはるかに上回る40万人にご来場いただきました。
髙久:私は「南町田グランベリーパーク」にできたパークライフ・サイトの立ち上げに携わっています。「南町田グランベリーパーク」は、町田市と東急株式会社の官民連携・共同による駅・商業施設・都市公園等の一体的な再整備プロジェクトで、パークライフ・サイトは、鶴間公園と商業施設をつなぐ位置にできた、中核施設です。ここには12月にリニューアルオープンした「スヌーピーミュージアム」のほか、本を通じて人と人との交流を生み出す「まちライブラリー」や「南町田子どもクラブつみき」、「PEANUTS Cafe(ピーナッツ カフェ)」などがあり、大人から子どもまで幅広い世代の方が、新たな時間の楽しみ方を発見できる場所となっています。コングレは、事業者として、このパークライフ・サイトを管理・運営しています。民設民営でこういった市民の交流施設を管理運営する、というのは、全国でも非常に珍しいケースなのではないでしょうか。
髙木:私は、「スヌーピーミュージアム」を担当しています。もともと、「スヌーピーミュージアム」は、2016年4月から2018年9月まで、再開発地の暫定利用で東京・六本木にありました。閉館後、南町田の開発の話があり、緑豊かでスヌーピーの世界観にもあうということで、2019年12月に南町田にリニューアルオープンしました。コングレと南町田再開発の施工者である東急さんは渋谷スカイで連携させていただいており、その関係もあって、本件に繋がったと聞いています。
モデレーター:渋谷も南町田も、メディア等でも非常に話題ですね。まだ開業して日が経っていませんが、予想外だったことや、今後の課題など教えてください。
吉田:現在は、さまざまな年代の方にご来場いただいていて、海外から20%、国内から80%という感じです。某有名アーティストの影響もあり「巡礼」的に訪れていただくことも多くなりました。1つ驚いたのが、サンセットの時間帯の人気です。展望施設の入館者数は午前が多く、夕刻は次第に減る、というのが通例ですが、渋谷スカイでは、サンセットの時間帯の来場が一番多く、混雑誘導に人繰りが必要なほどです。SNSにとてもきれいな夕日や富士山をたくさん投稿いただいていまして、その影響もあるかと思います。
今は、開業直後なので需要がありますが、それをどうやって継続させるかが次の課題です。渋谷には約600万人のインバウンドの訪問があるとのデータがあります。また、オフィスにおいても移転が8割がた完了し、約9000名のオフィスワーカーが渋谷に集結しています。別フロアには共創施設SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)があり、多くのイベントが開催されています。こういう人たちにどうやって上(展望施設)に上がっていただくか。周辺施設との連携や、広域渋谷圏を巻き込んだ企画など、新たな提案や取り組みが必要だと思っています。
髙久:渋谷は、外から人が集まるまちで、南町田は、地元の方が憩うまち、という感じで、全く違うような気がしていましたが、吉田さんの言われた「連携」という意味では、通じるものがあるなと思いました。新たにできるまちに、いかに地域の方を巻き込んでいくか、交流人口をどう増やすかが、まちの活性化につながる重要ポイントだと思っています。南町田では、整備工事で伐採した公園や道路の樹木を、本棚、テーブルや椅子に加工して、ライブラリーや子どもクラブで使用しています。また、伐採された木からウッドブロックを作りパークライフ・サイトの壁面を飾るというワークショップも大変な人気だったと伺いました。こういった、地域を巻き込む施策が連携を生み、新しいまちに愛着や活力をもたらすものになると思います。そういった意味では、私たちも事業者として、地域の皆さんに楽しい、また来たいと思っていただけるような新たな提案や発信が求められていると感じています。
髙木:スヌーピーミュージアムでは、町田市の推進する「えいごのまちだ事業」との連携プロジェクトが予定されています。展示物であるスヌーピーの原画は英語で書かれていて、谷川俊太郎先生の和訳とともに展示されていますので、英語の教材によいということで、子ども向けの英語プログラムを教育委員会の方と検討させていただいています。2020年度から市内全42校の小学校5年生が来館し、ミュージアムを見学しながら英語のアクティビティを行う、というものです。働いているスタッフも巻き込みながら、楽しいプログラムにできればと思っています。
モデレーター:髙木さんは、大学で言語教育を専攻されていて学芸員の資格も持っていると聞いていますが、その「バックグラウンド」も十分に活かしてのご活躍ですね。今後の課題は何でしょうか。
髙木:私自身、スヌーピーの世界観が大好きで、実はスヌーピーミュージアムの本館でもあるシュルツ美術館(米カリフォルニア州)で勤務させていただいたことがあります。六本木でも勤務し、ご縁もあって、南町田への参画もかないました。大好きなスヌーピーを媒介にしていろいろな方と繋がって、連携できる今の仕事にやりがいを感じています。
スヌーピーミュージアムの次の課題は、リピーターの獲得でしょうか。おかげ様で多くのお客様に来場いただいていますが、90%以上が初来館です。今はまだSNSでは当日のチケット情報の発信にとどまっているのですが、六本木時代は、登場キャラクターの豆知識など、スヌーピーのオタク的な情報も発信していました(笑)。こういう些細なことでも興味を持っていただくきっかけになればな、と思います。
吉田:髙木さんのその取り組み、すごいですね。「気が利いてる!」と思いました。それがまさに仕事の本質だな、とも思います。当たり前の事をするだけではなくて、こういうことがあったらな、ということにいち早く気づいて取り組むことで仕事の幅も広がるし、新たな課題も見つけられるし。私もそういう期待値を超えるような、感動を与えられる仕事をしていきたいな、と思います。まちの一員として、例えば、コングレの総合MICE企業としてのネットワークを活用して、来場者の獲得や広域渋谷圏が活発になるような、何らかの取り組みができればと思います。
髙久:渋谷も、南町田も、まちの持つ特性や個性が違うし、まちづくりのイメージやニーズも違うので、ニーズに合わせた提案が必要ですよね。南町田グランベリーパークは市も東急も非常に積極的に交流施策を展開されているので、私たちも活性化に寄与できるようなパークライフ・サイト活用の提案が求められていると感じています。髙木さんは、スヌーピーを媒介にして人とつながって、それが仕事につながった、と言われましたが、結局はまちづくりも、人と人のつながりをどう作るか、どうつなげていくかなのかな、と思います。パークライフ・サイトは、公園と商業施設をつなぐまちの中心で、いわゆる結節点のような働きの施設です。広場やワークショップなどを活用しながら、まちの魅力を最大化するような「つながり」が演出できればと思います。
モデレーター:ありがとうございました。