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大阪成蹊大学との産学連携プロジェクトから考える

対談

大阪成蹊大学との産学連携プロジェクトから考える

大阪成蹊大学(大阪市東淀川区/学長 武蔵野 實)との3か月に渡る産学連携プロジェクトが終了しました。課題解決型(PBL)授業として、マネジメント学部の2年生265名を対象に、当社が運営に携わる3施設に対して学生が集客企画を立案する本プロジェクト。本年4月からの3か月間で、施設ごとのテーマについて調査のうえ、企画を立案し、中間・最終プレゼンテーションを経て、最優秀チーム1チーム、優秀チーム3チームが選出されました。今回は、このプロジェクトを担当した施設・人材サービス事業本部の大平さんと末次さんにプロジェクトを振り返っていただきました。

発信することを念頭においた自由な発想のアイデアに感心しました。

モデレーター:大阪成蹊大学との産学連携プロジェクトが無事終了しましたが、連携プロジェクトの総評をお願いします。

大平:今回ご縁があって、当社の3施設の集客提案をしていただいたのですが、学生さんの提案は面白い切り口が多かったと思います。施設を運営する立場だと、やっぱりいろいろ考えすぎて、何かアイデアが思いついても、「それは難しいだろうな」と、思ってしまうところがあるのですが、学生の皆さんはそういうのがないので、すごく自由で。当たり前のことですが、難しいことは置いておいてまずはやってみる、とか、工夫するとか、そういう姿勢の大切さを再認識させられました。

末次:私は、バンドー神戸青少年科学館の副館長の立場で、今回の優秀賞の企画を拝見しました。まず思ったことは、やっぱり学生の皆さんは自分で発信することに慣れている世代だな、ということです。どの企画も、SNSとの親和性が高くて、発信する世代だからこその着眼点が非常に興味深かったです。特に気に入ったのは、科学館でのイベント企画で、白衣を着て実験するっていうアイデア。細かいことかもしれませんが、白衣を着て自分の子供が楽しそうに実験していたら、親としても写真を発信したくなりますもん。

大平:話題の取り扱いというか、切り取り方がうまいですよね。見せかた、ストーリーの付け方に慣れている。さすがデジタルネイティブ。吸収していかないといけないなと思いました。

末次:実は、科学館のエンターテイメント性を上げていかないといけない、ということを考えていて。親御さんというか、一般消費者のニーズを再認識させてもらういい機会になったな、と思います。SNSでの発信もそうですが、白衣を着れば子供のテンションも上がるし、子供が楽しんでいれば親も楽しい。そういう楽しい空間なら、ちょっと難しい科学も楽しく学べるんじゃないかな、と。そういう環境作りを求められていると感じています。

重要なのは、消費者のニーズを常に意識して、新しい切り口を提供し続けること。

モデレーター:科学館でのエンターテイメント性とは具体的にどんなことですか?

末次:最近スライムの企画をやったんです。科学館でスライム?っていう議論もあったのですが、実際やってみたら、帰りの電車で「スライム目当てで来たけど、プラネタリウムの星の解説がとても楽しかったね」、っていう親子の会話が聞けました。科学館×エンターテイメントつまり、エデュテイメント施設ってたぶんこういうことなんだな、と思います。こういう、科学のとなりにあるくらいの楽しいきっかけというか入口を提供することが求められているのではないかな、と。

コングレが指定管理者になってすぐのころの来館者は、なんとなくですが、科学館に来るべき家族が来るべくして来ていた感じでした。科学に対する興味をはじめから持っていて、1か月以上前にワークショップに申し込んで、当日はすごい熱意で来館してくださる、みたいな。最近は、科学館に行けば何かおもしろいことやってそう、くらいの軽い感じで来てくださる方が増えました。そういう家族にも楽しめる要素をたくさん作っておいて、ふとした生活の中で「ああそういえばこれって科学館でお姉さんが説明してくれたあのことだよね」、って繋がるような、そういう気づきと学びの場になればいいな、と思うし、そういう会話が聞こえると、楽しいですよね。

 

大平:コングレは科学のプロでもないし、どのように科学館の企画立案に取り組むべきか、というのは常に模索しないといけないな、と思っています。科学館にいくと何かありそう、っていう視点はすごく大切で、たとえば最近はSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育が取りざたされていますが、こういう新しいものが始まるとき、科学館に行けば何かありそう、と思ってもらえる対象であり続ける必要があるのかな、と思います。そのためには地域のニーズや社会の流れに敏感に反応しながら、アイデアを提供し続ける必要があると思っています。

自主企画を検討する際にいつも考えるのは、自分たちの自己満足になってないか、ということ。

モデレーター:学生の皆さんの企画の切り口はどうでしたか?

末次:自主企画を検討する際にいつも考えるのは、自分たちの自己満足になってないか、ということです。例えば、コアな科学好きの子供に向けたニッチな企画も提供したい。当館で実施したアクティブラーニングのプロジェクトが優秀で、大学の特別プログラムに参加し、アメリカの学会で発表した、というケースがありました。一方、「科学ってむずかしい」っていう大多数のご家族にも、科学館に行ったら何かある、面白そう、と思っていただくことも意識しないといけない。このバランスが難しいところです。科学館だけでなく、今回の対象になった「京都水族館」や「ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター」も、休日に楽しく過ごす場所として来場者に「選ばれる」ために、企画に工夫と差別化が必要ですが、各施設ともいろいろな背景や諸々の事情など難しいところがあります。学生からのアイデアは、こういう施設の背景にあまりとらわれず自由な発想だったので、ハッと気づかされることが多かったのだと思います。

学生が提案してくれたアイデアに、企業のもつ知識やノウハウを加えて世に送り出すのも企業の役割として大切かな、と思います。

末次:実際、バンドー神戸青少年科学館への企画提案は、しっかり考えて作りこまれていて感心しました。すぐにでも提案者の皆さんに実施していただきたいくらいです(笑)。

大平:今回のプロジェクトは提案までだったので、学生の皆さんに実施までお願いするのは難しいかもしれませんが、実際は実施までやってもらった方が、学びや気づきが大きいと思います。次回同様の企画があれば、その辺までプロジェクトを深化させられればいいな、と思います。実際その後がどうなったかのフィードバックは欲しいとのコメントも先生よりいただいていますし。

末次:さっきデジタルネイティブという発言がありましたが、ネットでなんでも情報は仕入れることができるけど、実体験の場って少ないのではないか、と思っています。情報はたっぷりあって、それでわかったつもりになっても実際やってみると全然違う、というのはよくあることで。そういう意味で、授業はこれで終わりかもしれないけど、実施するステージというか仕組みを提供するのも、企業の役割のような気がします。

大平:企業の役割というと、確かにそうで、学生の企画してくれたアイデアに、企業のもつ知識やノウハウを足して世に送り出してあげるっていうのも企業の役割として大切かな、と思います。このプロジェクトを通して、私たちもいろいろなことを学ばせてもらいましたし。提案してもらったアイデアを世に送り出して、それをフィードバックして、この業界おもしろそうだな、って思ってくれる方が増えればいいな、と思います。

末次:実は、神戸ポートアイランド全体を巻き込んでサイエンスフェスティバルを企画中なんです。今年の1013日、14日に理化学研究所や企業の研究所、近隣大学、ホテルなど、地域全体でサイエンスを盛り上げるイベントです。来年1月にも自主イベントを企画中です。1から企画立案して、それを地域の皆さんに協力いただきながら実現していくのですが、リスクも取りながらなので怖い部分もありますが、私はすごく面白い仕事だと思っています。今回の学生の皆さんにも、そういった面白さが伝わればいいな、と思いました。

ありがとうございました。

 

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