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会議プランナーが大学院で学び直すということ

インタビュー

会議プランナーが大学院で学び直すということ

西本恵子 プロフィール

一般社団法人MICE総研(コングレグループ)上席研究員。
MICE業界で働きながら、社会人学生として京都大学経営管理大学院博士後期課程に在学中。
研究テーマは「国際会議・MICEを通じた開催都市の価値創造モデル」。

インタビュアー:西本さんといえば、国内外様々な医学会を担当され、また業界の国際団体でも活躍される、業界きっての行動派!というイメージです。本業界に入られたのには、どのような経緯があったのでしょうか。

西本:最初に入った会社は東レという繊維メーカーで、主に海外営業を担当していました。退職後、通訳アルバイトに応募するつもりでPCOProfessional Congress Organizer: 会議運営会社)を訪問したところ、面接を担当した白髪の男性から、

「いまさら三流の通訳者になるくらいなら、会議運営をやってみたらどうや」

とお誘いいただきました。いったん辞退しましたが、よくよく考えてみると確かに面白そうだと思い直し、後日、改めてお願いして入社することになりました。

入社後は財界・政府・医学など、さまざまな分野の会議を経験しました。会議の企画・誘致・運営だけではなく、AMCAssociation Management & Consulting: 学協会経営・コンサルティング)の仕事を担当したこともあります。

転機は2011年に発生した東日本大震災です。地震・津波・原発事故の複合災害により、日本で予定されていた国際会議が軒並み中止・延期・開催地変更になりました。私が担当していた国際会議でも海外への開催地変更が検討されていて、不確かな状況の中ではそれもやむを得ないと考えていました。けれども、旅行会社や施工会社など、ふだんお世話になっているパートナーの皆さんから「これからMICE業界はどうなってしまうのでしょう?」と問いかけられて、「日本人として、日本で国際会議を成功させなければならない」と決心して、徹底的なリスクマネジメントと風評被害対策に取り組みました。それまでは漠然とした憧れから国際会議の業務に携わっていましたが、震災をきっかけに、国際会議を「課題解決型ビジネス」として考えるようになりました。

インタビュアー:PCOの仕事は裏方の仕事という印象がありますが、西本さんは積極的に行動されていますね。

西本:どんな仕事でも、指示待ちの「やらされ仕事」だと面白くありません。とことん考え抜いて、先回り提案をして、会議主催者の前にレールを敷くようなイメージで仕事をすると、お互いにwin-winとなるスムーズな仕事ができると思います。私の場合は、海外の先進事例を積極的に取り入れた提案を心がけていました。

インタビュアー:その後、京都大学大学院にご進学されています。現場で精力的にご活躍されてから、大学院で学ぶというご選択をされた理由を教えてください。

西本:それまで経験と勘で進めてきたMICEの仕事を、体系的に整理してみたいと思うようになったのです。当時、まちづくりの観点からMICEが注目されるようになり、国土交通省の若手のみなさんから自主勉強会を持ちかけられることが増えました。優秀な若手官僚のみなさんにMICEのビジネスモデルを説明・議論することはとても面白くて、より知識や分析能力をつけて互角に話せるようになりたいと考えました。さらに海外のMICE業界イベントに参加すると、海外のMICE専門家はたいてい修士号を持っていて、特にドイツや韓国ではPhDを持っている専門家も頻繁に見かけました。国際社会で活躍するためには修士号が必須であると考えたことも、大学院進学を決めた大きな理由の一つです。

インタビュアー:現在は大学院でどのような活動をされているのでしょうか。

西本:海外の論文を読んだり、研究指導を受けながら、学位論文の準備をしています。でも、本気でMICE研究を極めたければ、座学で勉強するよりも産業界の現場に身を置く、つまりコングレで働くほうがよほど勉強になりますね(笑)

そのため大学院では、MICEについて延々とレクチャーするのではなく、現場でMICEの面白さを実感できるプログラムを作りたいと思っています。その一つが、松本さんを派遣したパレ・デ・コングレ国際会議場(フランス)でのインターンシップです。学生・大学院・産業界それぞれにメリットのあるプログラムです。(パレ・デ・コングレでのインターンシップは次回の記事で紹介します!)

クラクフ(ポーランド)での学会発表

インタビュアー:今後、大学でPhDをご取得された後は、どのような展望をお持ちですか?

西本:PhD取得後は実務教員になりたいと考えています。MICE産業に身を置きながら集中講義や週末の講義を担当したり、海外インターンシップの派遣先も増やして学生がMICE業界に興味を持つきっかけを作り、大学と産業界の橋渡しをしたいと思っています。

インタビュアー:西本さんご自身が、大学院でご研究されてよかったと思うことはありますか?

西本:大学院に来たことで、思考の幅が広がり、業界の壁を越えた相談相手が増えました。開くことのできるドアが増えたというイメージでしょうか。このネットワークを生かして、これからも新しい試みに取り組んでいきたいと考えています。

 

インタビュアー:西本さんの今までのご経験に、大学院での研究を通して学術・学問的な側面が加わることで、新たな広がりがあるのだなと思いました。

また、現場の知識と、学問的なご研究両方の側面からMICEを深く理解しようという西本さんの姿勢から、強いプロフェッショナリズムを感じました。

本インタビューは以上になります。ご協力ありがとうございました。

以上