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パレ・デ・コングレ国際会議場インターン体験記-パリMICE事情-

レポート

パレ・デ・コングレ国際会議場インターン体験記-パリMICE事情-

今回は、イベントコーディネーターを経て、京都大学経営管理大学院へ進学。観光MBAのMICEグローバルインターンシッププログラムの第1号として、フランスを代表するMICE施設であるパレ・デ・コングレ国際会議場で勤務した松本萌さんの体験記です。

―松本 萌  プロフィールー
京都で文化系のイベントコーディネーターとして勤務したのち、MBA取得のため大学院へ進学。観光経営学に力を入れている大学院のプログラムで、在学中にICCAプラハ総会への参加及び、パリMICE施設でのインターンシップを経験。卒業後、コングレに入社。コンベンション部門に配属され、現在大型国際会議を担当中。

イベントコーディネーターから大学院へ

前職は京都でイベントコーディネーターとして勤務していました。米国美術館とのプロジェクトや海外での展覧会開催、国際会議やインセンティブツアーの受け入れなど、様々な切り口から文化交流に携わることができ、とてもやりがありました。文化施設のマネージャーを任された時、施設経営や運営、そしてこれまで携わってきたサービスや観光の業界についての知識不足を実感し、体系的に学びなおしたいと思いはじめました。ちょうどその時、京都大学経営管理大学院でサービスや観光に特化したMBAプログラムがあると聞き、退職して入学しました。大学院ではMICEについて学び、その経済効果や多くの人を動かす力に興味を持ち、卒業研究でもMICEを題材にしたいと思うようになりました。そのような流れで、観光MBAを立ち上げたばかりの大学院が実験的に始めたMICEグローバルインターンシッププログラムに、第一号として参加する機会をいただきました。

フランスを代表するMICE施設にインターンとして勤務

私が派遣されたのは、フランスを代表するMICE施設であるパレ・デ・コングレ国際会議場です。世界の中でもトップクラスの競争力をもつパリのMICE事情について、日本のMICE業界の方々も大変興味をお持ちで、事前に観光庁やJNTO、ICCA日本会員の皆様から、現地でリサーチしてくる項目を宿題としていただきました。

インターンシップに参加するまでは漠然とした理解でしたが、パリでは官民セクターのViparis社が、パレ・デ・コングレを含む市内の主なMICE施設10件を一括運営することで、予約管理などの効率化を図るとともに、情報集約によるMICE誘致競争力を生み出していることが分かりました。

私が配属されたのは、パレ・デ・コングレ国際会議場の国際セールス部門です。3週間のインターンシップですが、専用のデスクにノートPCとメールアドレス、そしてIC社員証が用意されていました。このIC社員証でViparisが運用する施設・イベントすべてにアクセスすることができます。オフィスでは、過去のビッドペーパーや素材集なども自由に閲覧する許可をいただきました。どなたも、「日本から来た学生にパリのMICE事情を教えてあげたい」という姿勢で、どんな質問にも、一つ一つとても丁寧に回答してくださいました。

さらにViparisが経営する他のMICE施設、パリ・コンベンションビューローや、ケータリングを担当する、紅茶で有名なフォション社にも派遣され、ユニークな体験をたくさんさせていただきました。フォション社では、初日は到着するなり調理用の白衣を渡されて、巨大な冷蔵庫のようなキッチンで終日サンドイッチを作り続けました。2日目は、デザイン会社のようにおしゃれな事務所で、テーブルクロスの豊富なカラーサンプルをもとにコーディネートを決める段取りを学びました。ケータリングに著名なシェフを起用することも多いとのことで、フランスらしい食へのこだわりを実感しました。

驚きのユニークべニュー運用

Viparisでは大規模MICE設備だけでなく、19世紀に建てられたオスマン様式の住宅であるオテル・サロモン・ド・ロートシルト(旧ロスチャイルド邸)もユニークべニューとして運営しています。ここでの研修でも、日本との違いに驚きの連続でした。歴史的建造物は通常、構造や配線の事情から最新設備を導入しづらいそうですが、オテル・サロモン・ド・ロートシルトではなんと、地下を掘削して500平米の多目的ホールを増築しており、最新機器を用いたイベント運営が可能になっています。また、天井のフレスコ画なども「事前に保険加入し、破損したら修復する」ことを条件に活用されており、日本の「利用制限による文化財保存」とは対照的に、「積極活用・修復する文化財保存」が進められている状況を目の当たりにしました。

特筆すべき新しいイベント創造への取り組み

さらに先進的だと感じたのは新しいイベントを創造する取り組みです。Viparisでは、大学やビジネススクールなどと協力して「2050年の施設を考える」「ミレニアム世代の意見とは」「次の世代が求めるイベント」といったテーマでマーケティングプロジェクトを実施し、イベントの創造に注力しています。その中で最も大きい取り組みが「フレンチイベントブースター」です。MICEビジネスに関連したベンチャーを支援する1,000平米のインキュベーションセンターを自施設内に立ち上げ、イベント主催者とのビジネスマッチングや実証実験の場を設けるという、世界初の取り組みが行われています。ここではイベントマネージャーの職業訓練も行われており、ベンチャーと人材育成を通じてイベント業界にイノベーションを起こすことを目的としているということでした。こうした先進的な取り組みを、施設運営者自らが主体となって実施していることが、強みなのだと感じました。

帰国後、驚きの連続だったインターンシップを通じて分ったこと、現地で直接見聞きしてきたことを形にしたいと思い、卒業研究では「パリMICE産業の国際競争力の源泉についての一考察~パレ・デ・コングレ国際会議場運営企業(VIPARIS)の事例分析~」をテーマに卒業レポートを執筆しました。インターンシップでの経験をもとに、日本のMICE業界で働いてみたいと思い、卒業後はコンベンションの運営と合わせてMICE施設など80の施設を運営するコングレに入社しました。

コングレでの実務を通じて、まずは日本のMICE事情を理解していきたいと思っています。Viparisと同じように施設の統合運営を行うコングレですので、パリで学んだ最先端の取り組みや経営の仕組みなどを活かした新しい取り組みができないか、じっくり考察していきたいと思います。将来的には、インターンシップ先でお世話になった皆様に、今度はお仕事でお会いして、恩返しするのが大きな楽しみの一つです。